新NISA

メリットは非課税です。例えば新NISAから得た配当金が一万円あったとします。通常ですと税金を差し引かれて手取りは約八千円ですが、新NISAなら一万円。この配当を再投資すると、通常は100円の株を80株買えますが、新NISAの配当なら100株買えます。これを毎年繰り返すと福利効果が出て、その差は大きくなります。

新NISA口座の株式や投資信託は無制限に売却できますが、その分は翌年以降に再利用できる非課税投資枠から減算されます。年間の非課税投資枠を超えて売却した場合は、超えた部分が課税対象になります。つまり非課税を望むなら、売却は年間360万円までで、何か急にお金が必要になったような場合に、この枠を超えてしまうと新NISAは非課税の効力を失くします。一般的な株式投資に比べると、新NISAは非課税のかわりに取引の自由度が制限されています。ですが株式投資は買った株が値下がりすることは珍しくなく、元々危険な部分もあります。長期投資ならそのリスクをかなり軽減できます。日銀も株を買うし、できるだけのことはするので安全な投資をしましょうね、という国の親心を感じます。

さて、外国には新NISAのような制度はあるのでしょうか?はい、あります。アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、シンガポールなどです。いずれの国の制度も個人の資産形成を支援するために、非課税で投資を行うことができる制度です。市場を利用しやすくして国民を富ませるのが狙いでしょうか。なお、中央銀行が株式やETFを購入することも各国ですでに始まっており、欧州中央銀行は2015年にETFの購入を、アメリ連邦準備制度理事会は2020年から株式の購入を開始し、それぞれ3兆ユーロ、1兆ドルの資産を保有しています。市場に資金を供給する量的緩和政策で、株価を押し上げる効果があり、景気を良くすると考えられています。これの発案者はアメリカ経済学者のベン・バーナンキです。「景気が悪ければヘリコプターからお金をばら撒けばいい」という彼の理論は有名で、ヘリコプターベンの異名をお持ちです。中央銀行が金融資産を買い入れるという行動は社会全体が均等にその恩恵を受けるわけではありません。株を買う資金がない人々もいるからです。その点は彼の理論と少し違いますが、新NISAの仕組みは現在の世界の流れといえます。